福井県公認心理師・臨床心理士会研修会に参加して – 「復職」だけではない、自分らしい働き方を見つけるために
はじめに:大切な学びと交流の機会に感謝して
先日開催された「福井県公認心理師・臨床心理士協会」の全体研修会に、話題提供者の一人としてお呼びいただきました。
各先生方の胸を借り、学びと交流の機会とし、明日の臨床の糧、ひいては日々おめにかかるクライアントさんの一助となれることを願い、過ごさせていただきました。
研修会のテーマは「クライエントの復職を支援するために必要な知識と技能」。
『復職』という言葉は、一見すると医療や会社の人事に関わる専門的なテーマに聞こえるかもしれません。
しかし、心や体の不調をきっかけに働き方を見直すことは、誰にとっても非常に身近で大切なテーマだと私は考えています。
私が発表に臨むにあたって、心に抱いていた願いがあります。それは、「この場が、皆様が日頃大事にしていること、お持ちの力、良さを再確認、学び合い、吸収し合う交流の機会になれば」という想いです。
ご一緒してくださった先生方、貴重な機会をありがとうございます。
この記事が、今まさに働き方に悩んでいる方、少し立ち止まってご自身のキャリアを考えたいと思っている方にとって、有益な情報となり、心を少しでも軽くする一助となれば幸いです。
「リワーク」とは何か? – 再び働くためのリハビリテーション
休職からの復帰を考える上で、「リワーク」という言葉を初めて耳にする方もいらっしゃるかもしれません。
まずは、この選択肢を知っていただくことが、ご自身の可能性を広げる大切な第一歩になると考えています。
研修会では、ご登壇の先生のお一人が「リワーク」について、とても分かりやすくご講演くださいました。その内容の一部を、ご紹介させていただきます。
「リワーク(return to workの略)」とは、うつ病などの精神的な不調で休職している方が、再び安心して職場に戻るために行うリハビリテーションプログラムのことです。
リワークとは、return to workの略語です。
気分障害などの精神疾患を原因として休職している労働者に対し、職場復帰に向けたリハビリテーション(リワーク)を実施する機関で行われているプログラムです。リワークプログラムの概要
復職支援プログラムや職場復帰支援プログラムともいいます。プログラムに応じて決まった時間に施設へ通うことで会社へ通勤することを想定した訓練となります。
また仕事に近い内容のオフィスワークや軽作業、復職後にうつ病を再発しないための疾病教育や認知行動療法などの心理療法が行われます。
また、初期には久しぶりの集団生活になれるための軽スポーツやレクレーションが行われることがあります。
プログラムの途中では、休職になった時の働き方や考え方を振り返ることで休職に至った要因を確認するとともに復職した時に同じ状況(休職)にならないための準備もしていきます。
復職に向けてリハビリを行うときに不安を感じる場合は、主治医に相談してリワークプログラムを紹介してもらうとよいでしょう。
日本うつ病リワーク協会「リワークプログラムとは」より引用
リワークが目指すゴールは、単に「職場に戻ること」だけではありません。
最も大切な目的の一つは「再発の予防」です。
一度は回復して復職しても、再びつらい状態に戻ってしまうことを防ぐために、リワークでは様々な取り組みを行います。
力をいれる取り組みの例
- 生活リズムの改善: 毎日決まった時間に通所することで、乱れがちな生活リズムを整えます。
- 病気の理解とストレス対処: 自分の心や体の状態を正しく理解し、ストレスと上手に付き合う方法を学びます。
- 体力回復: 散歩や軽いスポーツなどを通して、通勤や仕事に必要な体力を少しずつ取り戻します。
- コミュニケーションの練習: 他の参加者とのグループワークを通して、対人関係の感覚を徐々に取り戻していきます。
集団だからこそ
ご登壇の先生方やフロアの皆様と交流して印象的だったことの一つは
「集団であることの意味」
です。
リワークという場所に集うクライアントさんたちは、一人一人の人生や苦悩の具体は違えど、共通する悩みを抱えていることも珍しくありません。
そこでは、「しんどいのは自分だけではなかったんだ」と、集団だからこその安心感が生まれることが大切な要素だと感じます。
一人ではくじけてしまいそうなことも、仲間と一緒だからこそ続けられるのかもしれません。
リワークは、そんな温かい支え合いの場でもあると感じました。
このように、リワークは心と体の両面から、あなたの「再び働く」をサポートするための場所です。
私が大切にすること
では次に、私の所属の一つである集団ケアの場において、私が何を重視しているか、お話しさせてください。
私はあなたの人生の「主役」はあなた自身であると考えています。
私は、その物語を邪魔することなく、願わくば少しでもお力を発揮いただけるようサポートしたいと願っています。
「頭では分かっていても、体が緊張して動けない」「人前に出ると頭が真っ白になる」「落ち込みすぎたり、感情的になりすぎてしまう」
といった声に応えるため、身体感覚にアプローチするプログラム
コミュニティー・レジリエンシー・モデル(:コレモ)の導入もさせていただいております。
心だけでなく、体の声にも耳を傾ける。そんなサポートを私は目指しています。
↓関連 コレモに関しての当ブログ記事↓
あなたにとってのゴールとは?
ここからが、私がこの記事で最もお伝えしたいことです。
最終的に大切になるのは「あなたにとってのゴールは何か?」という問いです。
休職期間は、会社の制度上は「解雇猶予期間」と見なされる側面があります。
本人が回復や再発予防に向けて“戻れる根拠”を示すことが制度運用上求められる、とうかがいました。
活動記録表、睡眠覚醒リズム表、自己分析レポートetc…
自身の状態を客観的に記録・振り返る
主治医や産業保健スタッフと都度共有して、
どれくらい安定してきたか、どんなことがストレスになるか、
身体や心、考え方などに現れるストレスサインはどんなものがあるか、
どういった過ごし方や対策が役立ちそうか…etc
焦りや不安を感じてしまうのは当然のことです。
しかし、私はこの期間を「自分自身と向き合う時間」としていただくことをご提案したいと思います。
参考?AIとああだこうだ言いながら作ってみた試作、「自己分析レポート概要」






答えが出せない私の悩み
それは、会社・社会があなたに求めることと、あなた自身が大切にしたいこととの間で、どうバランスを見出していくか、というテーマです。
この二つが必ずしも対立するわけではないとは思います。
一方、その間で心が揺れ動くのは、とても自然なことだと、私は感じます。
だからこそ、考えてみてほしいのです。あなたにとってのゴールとは、人生とは、どういったことでしょうか。
精神科医の神田橋條治先生の言葉を借りるなら、治療の主役はクライアント自身の「自助の力(自然に治癒していく力)」です。

あなたの人生の舵を取るのは、他の誰でもない、あなた自身です。
この休職という経験は、決して楽なことではなく、そして他者には完全には理解し得ないあなただけの苦しみもあるのではないかと想像します。
そうした中、願わくば、「自分らしい生き方を模索するヒントの一つ」にしていただきたいと願います。
そして、クライアントさんには、そうできる力強さも同時にお持ちであると、私は信じています。
「ブロニー・ウェア氏の著書『死ぬ瞬間の5つの後悔』では、多くの人が人生の終わりに感じる後悔が紹介されています。
著者は特に以下の5つを挙げており、私たちの生き方を考える上で大切な示唆を与えてくれるのではないかと、私は感じます。
- 自分に正直に生きられなかったこと
- 働きすぎてしまったこと
- 本当の気持ちを伝えなかったこと
- 友人との関係を大切にしなかったこと
- 幸せを諦めてしまったこと
あなたは、どんなことを感じるでしょうか。
赴くままのつぶやき
今回の研修会資料作成時や、この記事を書いているときにふと、漫画『ジョジョの奇妙な冒険』や『鬼滅の刃』で描かれていた言葉や場面を思い出しました。
そこでは、困難や試練に立ち向かう“覚悟”や『自分を乗り越えること』の大切さが強く描かれていると私は感じます。
決して、簡単にいくわけでも、生半なことではないと感じます。
少し先が暗く、道があるのかどうかもわからない、自分で選ぶ、もがく、探す。
それでも、他ならぬあなた自身の人生を主体的に歩まれる、あなたを尊敬いたします。
参考資料:無料公開資料から





今回ご一緒いただいた先生のリワーク施設
おわりに
今回の研修会を通して、改めて多くのご縁と学びをいただきました。
あたたかく力強い支援の輪が広がっていることを、心から願います。
私は、あたたかく背中を押し、共に歩み、前を先導してくださる支援者の輪に、生かされていることを改めて感じました。
そして、もし今、あなたが仕事のことで深く悩んでいて休職という選択肢が頭をよぎっているなら、どうか一人で抱え込まないでください。
まずはかかりつけのお医者さんや、会社に設けられている相談窓口、そして私たちのようなカウンセリング機関に、あなたの気持ちをお話しいただくことが、大切な第一歩になります。
もし選択肢の一つに、当カウンセリングも含めていただけそうでしたら、
いつでもお気軽にご相談ください。
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